2023年10月12日(木)、今年も島根県立隠岐高等学校のみなさんが西宮聖和キャンパスにやって来てくれました。隠岐高校の関西研修旅行の一環であり、2019年度、2022年度に続き、3回目のご来学、ならびに発表会開催となりました。
今回、関学で発表するのは下記の5チーム(残りの9チームは大阪大学・立命館大学で発表)。9時になり、リプラ・メインステージにて発表会スタートです。(以下の写真はクリックすると大きく表示されます)
1チーム目(1班)のタイトルは「Protect Oki from Marine Debris」。海ごみ問題に着目し、自分たちで海中のごみを調査したり、シュノーケリングゴミ拾い体験イベントを企画および実施したり、すでにかなり活動を進めているチームです。こうした活動を通して、韓国でのごみの現状はどうなっているか、また、海ごみ問題への取り組みを持続していくためにはどうすればよいかということに関心を持つに至り、韓国の関係者とのオンライン交流を行っていくなどの活動方針が示されました。
2チーム目(3班)のタイトルは「隠岐のお土産」。隠岐の観光の課題としてリピーターが少ないことに着目し、お土産を工夫することでリピーターの獲得につながるのではと考えました。島内における主要な土産品や販売場所の調査から、長期間手元に残るお土産が少ないという課題を見出し、オリジナルコースターを製作するという解決方法を提案しました。しかし、島内でコースターを製作している事業所からの指摘を受けていったん立ち止まり、今後の探究活動の方向性を模索している現状が報告されました。
3チーム目(12班)のタイトルは「触れて学ぶおきごはん」。認知度の低い郷土料理を広めるにはどうすればよいかという課題に対し、このチームは食育に可能性を見出しました。特に子どもに興味を持ってもらうために郷土料理のおもちゃ製作を計画し、島内の工務店に提案しましたが、技術的な課題などを指摘されました。そこで、ガチャガチャを使って郷土料理を広めるという方向に転換し、景品として郷土料理のキーホルダーを製作し、ガチャガチャを回した観光客などが郷土料理に興味を持ち実際に食べることにつなげようとするアイディアが提示されました。
4チーム目(13班)のタイトルは「祭りの島 隠岐の島~祭・知・盛~」。隠岐の祭りの知名度が低いことや祭りの運営者不足などの課題をふまえ、このチームは隠岐の若者に祭りを広め次世代につなげることを目標に設定しました。布施地区で行われている大山神社祭礼を対象とし、子どもたち(小学生)に祭りの内容を知ってもらい、簡単な体験もできる「お祭りふぇす」の開催を企画しています。開催に向けて保存会の方々と計画を立てること、またSNSで情報発信を行っていくという活動方針が示されました。
5チーム目(14班)のタイトルは「記憶に残る 家族で繋がる 原始人体験」。隠岐には体験型観光が少ないという課題がある一方、質の良い黒曜石の産出地であり古い時代から人々の営みが続いてきたという点に着目し、原始人体験ができる観光アクティビティの企画開発を進めています。イノシシの骨を用いた釣り針作りや黒曜石を使った魚捌きの実験結果が報告されました。この発表会の前日には企業でのプレゼンがあり、その企業とのコラボも視野に入れながら、単発では終わらない持続可能な体験型観光の実現を目指すという展望が示されました。
今回は過去2回と比べて大学生の参加者が多く(私が担当する授業と連動させたからですが)、それぞれの発表に対して活発な質疑応答がみられました。
すべての発表終了後、各チームの中に大学生が入り、発表の振り返りや意見交換が行われました。
その後、全体講評として私からいくつかコメントさせていただきました。今年度のジオパーク研究は全体的に活発であり、8月に隠岐高校を訪問して各チームの活動状況を聞かせてもらったときは「今後どこまで探究が進展するんだろう」と期待が高まりました。少し期待しすぎたのかもしれませんが、今回の5チームの発表内容に対する感想としては、どのチームも行き詰まっている、頭打ちになっていると感じ、そのことを率直に伝えました。しかし、それは悪いことではなく、どのチームも重要な局面に差しかかっていると捉えるべきだと思います。行き詰まり、頭打ちの原因はチームごとに少しずつ異なりますが、アカデミックな立場から先行研究の重要性について述べ、現状突破のために先行事例・類似事例の調査・分析をしっかり行ってほしいと伝えました。そのほか、
- 目的から結論(到達目標)までの一貫性を意識すること
- みなさん(隠岐高生をはじめとする若い世代)が変わることが内発的に隠岐を変える力になる、それは隠岐に居住している人たちにしかできないこと
- 関係とは双方向的なものであり、みなさんも私たち(大学教員・大学生・研究機関)とかかわり続けてほしい、それも「関係人口」の在り方のひとつだと思う(定義や本来の文脈とは異なりますが)
- 持続可能な活動のポイントは外部とどんどんつながっていくこと
といったことを述べさせていただきました。最後に隠岐高校のW先生からもご講評と閉会の挨拶をいただき、発表会は無事終了しました。
なお、この発表会にあわせて今年度の隠岐実習の成果報告ポスターを作成し(ほとんど写真ですが😅)、会場で展示しました。このポスターはリプラ1Fの片隅でしばらく展示しますので、ぜひご覧ください!
昼食休憩後、13時から聖和キャンパスのツアーを実施しました。3グループに分かれ、隠岐実習メンバーが案内を担当しました。おもちゃとえほんのへやにも入らせていただき、聖和キャンパスの魅力を感じていただけたのではないでしょうか。
13時40分から634教室に場所を移し、「大学ってどんなところ?」と題したトークセッション(?)を実施しました。私からは関西学院大学教育学部の紹介のほか、高校時代の多様な経験・実績とその後のキャリアとの関係や大学教員の仕事などについて話しました。次に、隠岐実習メンバーが1人1テーマを担当し、大学での学び、ゼミ、キャンパスでの過ごし方、課外活動、遊び、学祭などの行事について5分ずつトークしました。
15時少し前、記念撮影を終えてから、いよいよ聖和キャンパスを出発し、徒歩で上ケ原キャンパスへ向かいます。
徒歩15分ほどで上ケ原キャンパスに到着。まずはやはり中央芝生へ。時計台を背景に記念撮影。しばらく芝生の上でくつろぎの時間。なぜか隠岐古典相撲の真似事を始める生徒たちも。その後は集合時間だけ決めて、キャンパス内を自由に散策してもらいました(隠岐実習メンバーが同行)。スタバに行ったり、キッチンカーでクレープを買ったり、短い時間ながら大学生気分を味わってもらえたのではないかと思います。
16時を過ぎ、いよいよ出発の時間が近づいてきました。バスの前に集合し、生徒会長のOさんからお礼の言葉をいただき、私たち隠岐実習メンバーからも1人ずつ感謝の気持ちを伝えました。16時20分ごろ、隠岐高校のみなさんを乗せたバスを見送り、この日のプログラムはすべて無事終了しました。
今回も隠岐高生の発表から大いに刺激を受け、また楽しく充実した1日を過ごすことができました。最後になりましたが、今年度もご来学いただいた隠岐高校のみなさまに対し、心よりお礼申し上げます。また、隠岐実習メンバーの力があったからこそ、この日のプログラムを無事やり遂げることができました。ほんとうにありがとうございました!